前号で憲法改正論議を題材にしましたが、日本人がこの問題になると途端に神学論争を始めると言いました。この意味は、現実論、論理的思考から外れるという意味です。焦点はズバリ9条と国防に関してです。私の持論をアップする直前に、法哲学者・井上達夫氏のインタビュー記事が目に入り、涙が出るほど感動しました。わたしの持論と趣旨を同じくする学者がいらしたのです。 氏曰く「 9条が立憲主義むしばむ 」。東大教授が随分過激発言をするものです。 「 字義通りなら非武装中立としか読めないが、解釈により自衛隊という軍隊を持ち日米安保条約を結んでいる。解釈でこれだけできるのでは、権力を縛る立憲主義の精神を根本からむしばむ」・・・。以前にも書きましたが、私が初めて憲法を学び9条2項を読んだ時の印象 「 軍隊を自衛隊と表現してごまかしている。憲法ってこんなもんなんだ 」 中学3年の少年の心を傷つけました。誤解してならないのは、氏は9条こそ病巣だと断じているのです。
日本人にとって憲法は経典のような存在、まさに「神聖にして冒すべからず」 です。ですから、どんなに現実離れしようが「改憲」などもってのほか。日本は1945年の敗戦後、70年もの間平和に過ごせました。経済発展も遂げ先進国となりました。これは憲法のお蔭、特に9条があったからこそ朝鮮戦争やベトナム戦争で戦乱に巻き込まれなかった、冷戦も乗り越えられた、もし、この9条を変えたら戦禍に巻き込まれる、と信じています。日本の国防が具体的に動き出し自衛隊が出来たのは、1954年、日米安全保障条約(改定条約)は1960年。実際には9条は形骸化していたのです。これでは9条を死守する合理性はありません。理性を超えた存在です。つまり9条は平和教の経典です。 ・・・続く。