建築物を建てる場合、その建設費を見積もるには建設単価を用います。住宅なら一般的に用いられていますが、記念館、美術館等でも同様に建設単価から建設費を見積もります。4年前、板谷波山記念館の新館建設に関する基本計画の段階でも利用されています。当時、波山記念館の新館建設では1㎡当たり59万円と想定されていました。新館の延べ床面積は1200㎡から1300㎡ですから7億1000万円から7億7000万円と見積もられ、基本計画審議会では議論が進められていました。時間が経過していますので現在では1㎡当たり70万円くらいに上昇しているでしょう。先ごろ竣工した「認定子ども園せきじょう」の建設費もその程度でした。
先ごろアルテリオの空調設備の改修に18億円かかると説明を受けました。18億円という数字の大きさを建設物で考えますと18億÷70万=2570となり、2570㎡の記念館・美術館が建設できる金額です。現在のアルテリオ内にある美術館の規模とほぼ同じです。現在の美術館の不都合――地下駐車場であることと3階に位置することで市民から不評を買っていること、ガラス張りの吹き抜け空間と一体的な空調システムであるため湿度管理が困難で、しかも経費が過重である――を考慮すれば、現在の美術館つまりアルテリオ3階以上の部分を閉鎖し、新たに板谷波山記念館と美術館を合体した建築物を考えることも一案ではないでしょうか。
同じように、空調単価も考えられます。近年の公共施設、学校、体育館等の実績から割り出される数値は、1000㎡当たり1億円というものです。一般住宅には当てはまりません。あくまで床面積1000㎡を超える大規模な公共施設についてです。アルテリオの延べ床面積(地下を除く)は約8000㎡、単価を掛ければ通常なら8億円となります。おそらくすでに建設されている壁や形状が工事を困難ならしめ、さらにガラス張りという負荷が必要出力を通常より大きく計算しなければならず18億円となったのでしょう。積算値はプロが算出するので正しいのでしょうが、10億円もの乖離が発生するということは、それだけ空調しづらい建物であることの証左です。このことを考えても、これまでの利用形態のままでの空調改修は非現実的に映ります。