私の事務所では、生前贈与、相続の相談をよく受けます。市民の権利意識の高まりなのか、世知辛い世相の反映なのか分かりませんが、昨今の世の中は、相続でもめるケースが増えています。実際、相続手続きの依頼を受けても、約4割は手続きが終了しません。相続人の間で協議がまとまらないからです。これを避けるためでしょう、またマスコミ等で生前贈与、遺言のメリットを取り上げていることもあり、冒頭の相談となるのでしょう。
さまざまなケースがあり、一言で何が最善の方法か伝えることは困難です。資産があり多くの不動産を所有している人、預貯金を多く持っている人、農地を多く持っている人、負債を抱えている人、推定相続人(もし死亡したら相続人となり得る人)は何人いるか、その中で自己主張の強い人がいるかで答えは違います。
もうひとつ、悩ましい問題があります。大きな債務と資産が両方ある場合の相談です。先々の債務超過、自己破産や差押を見越して資産を譲渡する意思が見える場合、債権者への詐害行為となる恐れがあります。債権者の利益を阻害し、社会の公正、公平を失します。人情からは知人や友人の資産を優先的に守りたいのですが、市議会議員、行政書士という立場からは難しい判断となります。